人物線刻画土器
(じんぶつせんこくがどき)
【橿原市指定文化財】
弥生時代中期後半の広口壷の胴部と考えられます。破片であるため全体像を見ることができませんが、ヘラ状工具によって鮮明に目、鼻などが描かれています。とくに、眉毛から鼻にかけては力強く表現されています。胴部は直線で描かれ、途中内側に屈曲させ、腰部を表現し、腰紐を意識したと思われる2本の線が表現されています。「魏志倭人伝」(ぎしわじんでん)でいうところの貫頭衣を想像させます。また左肩から頭部にかけて羽根飾状の線が見られ、鳥装(ちょうそう)を意識して描かれた人物像とも考えられています。弥生人の服装などを知るうえで貴重な資料といえるでしょう。1998(平成10)年度に橿原市指定文化財になりました。

人物線刻画土器
名称 | 考古資料 坪井遺跡出土人物線刻画土器 |
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員数 | 1点 |
指定年月日 | 平成10年3月20日 |
所在 | 橿原市川西町858-1橿原市歴史に憩う橿原市博物館 |
所有者または保持者の住所および氏名 | 同上 |
管理責任者の住所および氏名 | 橿原市歴史に憩う橿原市博物館 |
品質・形状・寸法など | 土器(破片) 長辺約12センチメートル、短辺約8センチメートル、厚さ約0.9センチメートル |
年代または時代 | 弥生時代中期 |
指定理由 | この土器片は弥生時代中期の壷の胴部と考えられるが、小片であるため線刻画全体の構図を見ることはできない。しかし、線刻自体は全体に細く鮮明にのびのびと描かれており、頭部の輪郭は、小さいカーブを箆で表現するため2~3回にわたって線刻された結果、刻線が太くなっている。目、鼻、口など顔面の表現は鮮明に描かれ、とくに眉毛から鼻にかけて力強く表現されている。左肩より下にむかって直線的に延びる刻線は他に比べて弱々しいが、描かれた位置から推察して腕を表現した可能性も考えられる。胴部は直線で描かれ、途中内側に屈曲させて腰部を表現している。この部分には、腰紐を意識したいと思われる2本の線が見られる。左肩から頭部にかけて幅約2.5センチメートルを測る線刻の中に、あたかも羽根を表現するかのような放射線状の線刻が優雅なタッチで描かれている。このような表現方法は、鳥取県稲吉角田(いなよしすみた)遺跡・奈良県清水風(しみずかぜ)遺跡より出土した絵画土器と類似し、鳥装を意識した人物像と考えられる。 稲吉角田遺跡・清水風遺跡から出土した絵画土器は、その表現方法が簡略・抽象的で、とくに顔面のリアル感が乏しいのに対し、本資料は顔面などの表現方法が鮮明であるなど全国的にも類例が少なく、弥生時代の文化を知る上で極めて重要である。 |
その他参考となるべき事項 |
この記事に関するお問い合わせ先
文化財保存活用課
奈良県橿原市川西町858-1(歴史に憩う橿原市博物館内)
電話:0744-47-1315
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更新日:2023年03月28日