人権コラム

更新日:2025年02月14日

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人権コラム(2月号)

映画から考えよう

人権コラム第32回目を担当する人権・地域教育課です。

3月7日(金曜日)に笑福亭鶴瓶さん主演の映画、『35年目のラブレター』という映画が全国公開されます。映画のチラシには「心温まる感動の実話」と描かれているとおり、主人公の西畑保(たもつ)さんは実在の人物で、今も元気に講演活動などをされています。ロケの現場にも訪問された西畑さんが皎子(きょうこ)さん役の原田知世さんと談笑されていると「俺の妻やぞ~気安くしゃべらんといて~」と鶴瓶さんが声を掛けられることもあるそうで、ロケの現場もあたたかい雰囲気のようです。映画はエンターテインメントなので観た人が楽しかったり、あたたかい気持ちになったり、元気になったりすればいいと思うのですが、主人公の西畑保さんの生き方から人権について考えてみることはどうでしょうか。

西畑さんは、小学校にほとんど通うことができなかったため文字を獲得することができませんでした。中華料理屋さんなどでお仕事をされたのですが、文字が書けないため注文をメモできなかったり、出前の電話が掛かってきたときに住所がメモできなかったり苦労をされました。また、一緒に働く人からの嫌がらせがあり悔しい思いもされました。文字が読めることを前提に社会は動いており読み書き出来ない者は排除されてしまうことを実感されながらも、西畑さんは力強く生き抜いてこられました。

 そんな西畑保さんは結婚される皎子さんと出会います。デートの時には読めない新聞を持って行き、文字が分からないことは秘密にしておられました。しかし、結婚すると一緒に生活をするわけですから隠し通せるはずもなく、皎子さんに知られてしまいます。離婚も覚悟した西畑保さんに皎子さんは「ごめんやで。今までようがまんしたな。もう苦しまんといてね。」と語りかけました。皎子さんが保さんを大切に思っていること、そして優しい人柄であったことが分かります。しかし、読み書きできない人と今後の人生を共に歩んでいくとの宣言でもあり、そう考えると皎子さんは『優しい人』だけでは終わらないと思います。

西畑さんはこれまでの人生の中で意地悪な人や、あたたかく優しい人や、非常に重い過去を背負った人とも出会われましたが、西 畑さんのお話は夜間中学との出会いなくしては語れないと思います。「夜間中学に出会って、自分の人生が変わった。」と語られる西畑さんが、夜間中学に入学されたのはなんと64歳の時でした。そして映画のタイトルにもある最初のラブレターが完成するのは、結婚から36年5ヵ月が過ぎ、西畑さんは71歳になっていました。このことについて新聞記者からインタビューを申し込まれた西畑保さんは、ラブレターを書いただけ、普通の人がどれだけ手紙を書いてもメディアが取り上げるはずがない。字を覚えたばかりの夜間中学生が書いたから関心が集まった、と考えておられました。ただ、自分の体験を通して夜間中学の実態を知ってもらえるなら、うれしいと思っていた。読み書きできない者にとって、社会がどれほど厳しいか、字を学ぶ喜びはいかに大きいか。少しでも多くの人に知ってもらいたいと語っておられます。

 今回のコラムは、西畑さんの人との出会いや夜間中学との出会いなどから、自分自身のことについて考えるきっかけになればと考え作成しました。最後に識字に関わることとして橿原市には畝傍夜間中学があること、大久保コミュニティセンターで第2・第4土曜日に識字学級が開催されていることもお伝えします。

 

市役所職員向けに作成したコラムです。

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