人権コラム
人権コラム(6月号)
節目の日から考えよう
人権コラム(第36回)節目の日から考えよう
人権コラム第36回目を担当する人権・地域教育課です。
昨日、沖縄県糸満市の平和祈念公園では沖縄戦の犠牲者を悼む『沖縄全戦没者追悼式』が営まれました。20万人以上の犠牲者を出した凄惨な地上戦から今年で80年が過ぎました。沖縄には長い歴史の中で築かれてきた「戦争を憎んで、人を憎まず」という平和思想があり、1995年に建立された『平和の礎』には国籍や軍人・民間人の区別なくすべての犠牲者のお名前を刻むことになっています。
6月23日は日本軍の牛島満司令官らが自決して集団的戦闘が終わったとされる日です。集会は、悲惨な戦争を二度と繰り返さないという決意を次の世代に伝えていく観点からも大きな役割を果たしてきたと考えます。しかし、80年という歳月が過ぎたことで、当時の体験を語ってくださる方が減ってきています。そんな中、今年は小学校6年生の城間一歩輝(いぶき)さんが『おばあちゃんの歌』の朗読をしてくださいました。詩には、艦砲射撃の食べ残しと言われたことや、手榴弾で左の太ももに大けがをした、85歳の祖母比嘉キヨ子さんの体験談が盛り込まれていました。脚に残った傷跡をキヨ子さんは汚いと苦しみ、娘のさおりさんにすら、2年前まで傷跡を見せたことがなかったそうです。更に「あの戦で死んでおけばよかった」との言葉を聞いた11歳の一歩輝さんは、おばあちゃんの思いを伝えたいと「艦砲射撃の食べ残し、と言われても生きてくれて本当に良かったと思った」など、まっすぐな思いをつづられました。
朗読の時、おばあちゃんの顔を見たら泣いてしまうと会場のキヨ子さんを見ないように、顔を上げて堂々と朗読する姿や、おばあちゃんの思いも背負った一つひとつの言葉に、会場ではすすり泣く声も聞こえたそうです。『おばあちゃんの歌』を紹介します。
毎年、ぼくと弟は慰霊の日に おばあちゃんの家に行って
仏壇に手を合わせウートートーをする
一年に一度だけ おばあちゃんが歌う
「空しゅう警報聞こえてきたら 今はぼくたち小さいから 大人の言うことよく聞いて
あわてないで さわがないで 落ち着いて 入って いましょう防空壕」
五歳の時に習ったのに 八十年後の今でも覚えている
笑顔で歌っているから 楽しい歌だと思っていた
ぼくは五歳の時に習った歌なんて覚えていない
ビデオの中のぼくはあんなに楽しそうに踊りながら歌っているのに
一年に一度だけ おばあちゃんが歌う
「うんじゅん わんにん 艦砲ぬ くぇーぬくさー」
泣きながら歌っているから悲しい歌だと分かっていた
歌った後に 「あの戦の時に死んでおけば良かった」 と言うからぼくも泣きなくなった
沖縄線の激しい艦砲射撃でケガをして生き残った人のことを
「艦砲射撃の食べ残し」 と言うことを知って悲しくなった
おばあちゃんの家族は 戦争が終わっていることも知らず 防空壕に隠れていた
戦車に乗ったアメリカ兵に「デテコイ」と言われたが
戦車でひき殺されると思い出て行かなかった
手榴弾を壕の中に投げられ
おばあちゃんは左の太ももに大けがをした
うじがわいて何度も皮がはがれるから アメリカ軍の病院で
けがをしていない右の太ももの皮をはいで 皮ふ移植をして何とか助かった
でも、大きな傷あとが残った
傷のことを誰にも言えず 先生に叱られても
傷が見える体育着に着替えることが出来ず 学生時代は苦しんでいた
五歳のおばあちゃんが防空壕での歌を歌い
「艦砲射撃の食べ残し」と言われても 生きてくれて本当に良かったと思った
おばあちゃんに 生きていてくれて本当にありがとうと伝えると
両手でぼくのほっぺをさわって 「生き延びたくとぅ ぬちぬ ちるがたん」
生き延びたから 命がつながったんだね とおばあちゃんが言った
八十年前の戦争で おばあちゃんは心と体に大きな傷を負った
その傷は何十年経っても消えない
人の命を奪い苦しめる戦争を二度と起こさないように
おばあちゃんから聞いた戦争の話を伝え続けていく
おばあちゃんが繋いでくれた命を大切にして
一生懸命に生きていく
戦争を知らない私たちも、家庭や職場で少し戦争について語りあってみませんか。
市役所職員向けに作成したコラムです。
バックナンバー
令和7年4月号~最近聞くようになってきた言葉から考えよう~ (PDFファイル: 205.7KB)
令和7年2月号~映画から考えよう~ (PDFファイル: 197.8KB)
令和6年12月号~性別欄から考えよう~ (PDFファイル: 190.5KB)
令和6年10月号~袴田事件から考えよう~ (PDFファイル: 206.3KB)
令和6年8月号~パリオリンピックから考えよう~ (PDFファイル: 279.6KB)
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更新日:2025年07月24日