かけはし

更新日:2025年03月17日

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かけはし60号

35年目のラブレターから考えよう

3 月7日に笑福亭鶴瓶さん主演の映画、35年目のラブレターが公開されます。鶴瓶さん演じる西畑保(たもつ)さんは、貧しさ故にいじめられ、低学年で小学校に通わなくなり、読み書きができないまま社会に出ました。差別的な扱いを受け、言い知れぬ劣等感を抱いてきましたが、持ち前の明るさを捨てず、手に職をつけ、結婚して子育てをし、そして還暦を過ぎて夜間中学で読み書きを学び始めました。その理由は、最愛の妻皎子(きょうこ)さんにラブレターを書くためだったそうです。保さんがラブレターを書きたいと考えた皎子さんは、保さんが文字を書けないことを知らずに結婚しました。結婚して数週間後に署名が必要な回覧板が届いたことで、保さんが文字を書けないことを知ります。離婚を覚悟した保さんに対して皎子さんの言葉は「つらかったやろな、大変やったんと違うの」でした。それから36年余りの歳月が過ぎ、皎子さんに保さんからの「ありがとう」を伝えるラブレターが届きました。語句に間違いはあったものの、ラブレターは皎子さんの心を打ちました。そしてこのラブレターは夜間中学がなければ完成されることはありませんでした。

保さんが通われた夜間中学は奈良市立春日中学校夜間学級で、うどん学校ともよばれていました。奈良県には天理市の夜間中学・吉野自主夜間中学・西和自主夜間中学・宇陀自主夜間中学と橿原市の畝傍夜間中学があります。3つの公立夜中と3つの自主夜中で現在約200人の人たちが学んでおられます。夜間中学については令和5年6月に閣議決定した教育振興基本計画等で、すべての都道府県と政令指定都市に少なくとも1校の夜間中学を設置する方針が示されました。橿原市には畝傍夜間中学があるため想像しにくいのですが、令和5年の時点で夜間中学は23都道府県に44校しかありませんでした。そして夜間中学は、保さんのような義務教育を修了しない学齢期を経過した方だけではなく、不登校など様々な事情により十分な教育を受けられなかった方、外国にルーツの有る方などの学びの場になっています。夜間中学は「あってはならないが、なくてはならない学校」と言われています。「あってはならない」の意味は、夜間中学が存在するということは教育を受ける権利が保障されていないとの考えからです。

保さんが在学していた当時、春日夜間中学は最長20年で卒業しなければなりませんでした。「夜間中学校に出会って、人生が変わった」とおっしゃる保さんの、春日夜間中学での最後の作文を紹介します。「僕は今年で卒業しますが、仕事の上では読み書きが出来ない事で人には言えない苦労をしました。でも僕には恵まれた事が沢山ありました。まず素晴らしい相手に出会えた事です。そうして先生方やたくさんの方々に出会えた事です。学校を卒業するのはまわりの方々にずい分助けられました。学校を卒業したらどんな人生があるのか楽しみです。僕は夜間中学校に出会って本当に良かったです。」

人権・地域教育課

 

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