令和7年10月市長コラム
中曽司の挽き茶に学ぶ 伝統と未来
挽き茶を頂く市長(市長室にて)
朝夕の風に涼しさが増し、木々の葉も少しずつ色づき始め、秋の深まりを感じる季節となりました。
実りの秋を迎え、市民の皆さまにおかれましては、健やかにお過ごしのことと存じます。
皆さんは、橿原市北西部の中曽司町に伝わる「挽き茶(きりこ茶)」をご存じでしょうか。
かつてこの地域では、多くの家が庭や畑に茶の木を植え、境界や生垣代わりとすると同時に、自家製の茶を作り飲む風習がありました。
いわゆる「茶の湯」とは異なり、難しい作法のない庶民のお茶で、今も地域で大切に受け継がれている、全国的にも数えるほどしか残っていない貴重な喫茶文化です。
挽き茶は、石臼で挽いた茶を茶筅で十分に泡立て、ほんの少しの塩を加えたうえでお湯を足し、最後に小さなあられ(きりこ)を浮かべていただく独特の飲み方をします。香ばしい風味に塩味が重なり、素朴ながらも奥深い味わいが広がります。
私も昨年、中曽司町で開かれた挽き茶会に参加し、石臼を回し、茶筅で泡立てた一服を味わいました。目に鮮やかな泡と浮かぶあられ、そして地域の方々との温かな交流は、とても心に残るひとときとなりました。
中曽司では、茶筅で泡立てることから「お茶をいれる」ではなく、「お茶をたてる」と言います。そして、畑で採れた芋や豆などを煮た「茶の子」をお茶うけとして楽しむ風習も残っており、こうした暮らしの知恵や地域の文化が、今も息づいていることに深い魅力を感じます。
本市は来年、市制70周年を迎えます。中曽司の挽き茶のように、先人たちが大切にしてきた伝統を改めて見つめ、節目の年を通してその価値を未来へつなぐことは、私たちの大切な役割です。歴史と文化、そして橿原市の歩みを次の世代へ伝えることが、これからのまちの魅力をさらに豊かにすると信じています。
昨年の中曽司挽き茶会の様子
昨年の中曽司挽き茶会の様子(お茶うけ)
挽き茶
この記事に関するお問い合わせ先
秘書広報課
奈良県橿原市八木町1-1-18(市役所本庁舎)
電話:0744-47-2632
お問い合わせフォーム
更新日:2025年10月01日