くらしの情報(歴史編)

更新日:2023年03月28日

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1)消費者とは?

消費者とは、商品財団法人やサービスを購入し、消費・使用する人のことをいいます。たとえば、母親が病院で出産した場合、人は生まれたときから医療サービスを利用します。生まれたばかりのときは、直接自分でお金を払いませんが、産着やミルク、紙おむつなどを消費します。つまり、生まれ落ちたしときから消費活動を開始しています。人は生まれてから死ぬまで消費者なのです。

2)消費者問題とは?

生産する人と消費する人が同一人物である、いわゆる自給自足の時代には消費者問題が発生することはあまりありませんでした。しかし、経済社会が発展し、生産と消費の機能が分離したことで、「消費者」の概念が誕生し、消費者と生産者との間に市場が介在することになりました。
昔は消費者と生産者の間に情報や技術にそれほど大きな格差はなかったので、消費者は商品に何か問題を見つけても対等な立場で身近な事業者に交渉してきました。また、食卓に並ぶ食材を購入する場合でも、町内や近隣の八百屋さん、魚屋さん等で購入し、たとえばその食材に異物が混入していたとしても、直接自分で八百屋さん、魚屋さんなりに伝え交渉できましたし、生産者と消費者はお互いによく知っている間柄ということもあり、消費者被害も小規模で済みました。
しかし、戦後になって、大量生産、大量販売、大量消費の時代とともに、消費者被害は短時間に広範囲で発生するようになりました。大量生産、大量消費のシステムでは、購入・使用者が多数に及び、消費者は商品の情報や知識をほとんど持たず、その商品の安全性や適正価格をチェックすることが困難となります。
このように、事業者(生産者)に比べ消費者はあらゆる意味で弱者となり、経済社会のしくみが複雑化するなかで、消費者問題は構造的に発生してくるようになったのです。つまり、消費者問題とは、消費者が事業者(生産者)より購入する商品・サービスを受ける上での肉体的・精神的・経済的被害または不利益といえます。消費者問題は、時代や消費生活のスタイルの移り変わりによって変化していきます。

3)消費者主権について

「消費者主権」とは、市場経済活動を方向づける権能は、生産者ではなく、消費者に主権があるという概念です。消費生活において、企業(生産者)と消費者の対等な関係が成立するためには自由競争が有効に機能していくことが前提となります。市場が開かれたものであり、多くの同業業者が参入し、価格競争やサービス競争がなされていれば、消費者の選択肢は多く、お金を払って自由に商品を選ぶことが可能です。消費者はその購買行動を通じて、消費者のニーズを伝えると同時に企業も消費者に支持される商品をより安く提供できるよう努力をします。その結果、消費者の希望する商品が適正な価格で市場に出回ることになります。このように自由競争が有効に機能していれば、より優れたより安い商品を選択する消費者の合理的な選択が、市場メカニズムを通して企業の生産活動(商品の質や流通量など)を決定する力を発揮します。このような消費者の力を「消費者主権」といいます。しかし、企業(生産者)と消費者との間に情報の格差があると、消費者が自分の意思で適切な商品を選ぶことはできません。企業が公正で自由な競争を行い、消費者と商品に関する知識・情報を共有してこそ、消費者が必要とする適切な数量の商品が適正価格で無駄なく市場に提供されます。

4)ケネディ大統領「消費者保護に関する特別教書」…消費者の4つの権利

消費者主権を実現するために、守られるべき消費者の権利と責任があります。1962年(昭和37年)ケネディ大統領は、連邦議会に「消費者保護に関する特別教書」を送り、「消費者の4つの権利」を明らかにし、これを大統領の権限において保障すると約束しました。このケネディ大統領の消費者の4つの権利は、各国の消費者団体や消費者行政の指針とされています。
消費者の4つの権利とは、

  1. 安全を求める権利
  2. 知らさせる権利
  3. 選ぶ権利
  4. 意見を聞いてもらう権利

その後、1975年(昭和50年)には、フォード大統領が消費者の5番目の権利として、5.「消費者教育を受ける権利」を付け加えています。さらに、1978年(昭和53年)にIOGU(国際消費者機構:現在CI)の会長に就任したアンワーファザールは、ケネディ大統領の4つの権利をもとに、1982年(昭和57年)に「消費者の8つの権利と消費者の5つの責任(消費者憲章)」を定めました。

5)CI【国際消費者機構:ConsumersInternational】が定める「消費者の権利宣言」

消費者の8つの権利

  1. 生活の基本的ニーズが保証される権利(therighttosatisfactionofbasicneed)
  2. 安全である権利(therighttosafety
  3. 知らされる権利(therighttobeinformed
  4. 選ぶ権利(therighttochoice
  5. 意見を反映される権利(therighttobehead)
  6. 保障を受ける権利(therighttoredress
  7. 消費者教育を受ける権利(therighttoconsumereducation
  8. 健全な環境のなかで働き生活する権利(therighttoahealthyenvironment)

消費者の5つの責任

  1. 批判的意識(Criticalawareness)
    商品やサービスの用途、価格、質に対し、敏感で問題意識を持つ消費者になる。
  2. 自己主張と行動(Actionandinvolvement
    自己主張し、公正な取引を得られるように行動する。
  3. 社会的関心(Socialresponsibility
    自らの消費行動が、他者に与える影響、とりわけ弱者に及ぼす影響を自覚する。
  4. 環境への自覚(Ecologicalresponsibility
    自らの消費行動が環境に及ぼす影響を理解する責任
  5. 連帯(Solidarity
    消費者の利益を擁護し、促進するため、消費者として団結し、連帯する。

6)消費者行政の憲法「消費者基本法」

消費者基本法は、1968年(昭和43年)に制定されました。当時の法律名は、「消費者保護基本法」でしたが、2004(平成16)年に大幅な改正が行われ、法律名も「消費者基本法」へと変更されています。

改正のポイントは、現代の消費者問題が消費者と事業者との間で、情報力、交渉力、経済力等の格差が社会構造的に生じていることに原因があると定義した上で、消費者の権利や消費契約の適正化に関する条項が盛り込まれたこと、消費者が単に「保護の客体」にとどまるのではなく、「権利の主体」であることを明確にし消費者の自立の支援を基本理念としていること、またこれらの実現のために、事業者、行政、消費者の責務や責任を明らかにしていることなどです。特に事業者の責務が拡充され、従来に加え、消費者の安全及び消費者との取引における公正の確保、消費者に対し必要な情報を明確かつ平易に提供すること、消費者との取引に際して消費者の知識・経験及び財産の状況等に配慮すること(適合性の原則)、環境の保全への配慮、自主行動基準の策定等による消費者の信頼の確保に努めることとされました。
尚、第2条の基本理念には、CIの「消費者の8つの権利」の内容が盛り込まれています。

消費者基本法(抜粋)

第二条(基本理念)

消費者の利益の擁護及び増進に関する総合的な施策(以下「消費者施策」という。)の推進は、国民の消費生活における基本的な需要が満たされ、その健全な生活環境が確保される中で、消費者の安全が確保され、商品および役務について消費者の自主的かつ合理的な選択の機会が確保され、消費者に対し必要な情報及び教育の機会が提供され、消費者の意見が消費者政策に反映され、並びに消費者に被害が生じた場合には適切かつ迅速に救済されることが消費者の権利であることを尊重するとともに、消費者が自らの利益の擁護及び増進のため自主的かつ合理的に行動することができるよう消費者の自立を支援することを基本として行わなければならない。

なお、この法律で定められている消費者の権利は、「理念」としての権利であるので、具体的な権利は、例えば商品の欠陥によって消費者が身体的及び経済的被害を受けた場合などで損害賠償を請求する場合などでは、「製造物責任法(PL法)」などの個々の法律によって救済を図ります。

7)萌芽期の消費者運動

1.消費生活協働組合運動

戦前の消費者運動は、消費生活協働組合運動(明治10年代の初頭)は始まりです。1900年(明治33年)には産業組合法が交付され、生協の「購買組合」としての活動が認可されるにいたりました。日露戦争後の物価上昇と米の不作による米価暴騰から生活を防衛するために多くの組合が設立された時代です。

2.米騒動

1918年(大正7)年に米騒動が起こりました。第一次世界大戦後の米の消費量の増大や輸入量の減少の影響などから、1918年頃から米価が急騰しました。売り惜しみや買占めなどが発生し米価が暴騰、7月に富山県の魚津漁港にて北海道への米の輸送船を阻止しようと主婦らが集まりました。8月には、約200人の主婦たちが米問屋を襲撃し、米の移出の停止と販売を求めました。これらの米騒動を発端として、米騒動が日本中に広がりました。

3.主婦連合会の結成

第2次世界大戦後、消費者は生活用品の欠乏、ヤミ物資、売り惜しみ、有害商品、不良生活用品に悩まされました。これらに対抗するために立ち上がった消費者、特に大都市で物不足と物価の高騰に悩んでいた消費者によって、運動組織が形成されるようになりました。
「関西主婦連合会」(1949年設立)の全身である「鴻池新田主婦の会」は「米よこせ(風呂敷)デモ)(1945年10月)は、米穀配給公団に押しかけて遅配・欠配分の米を要求した事件として知られています。1948年7月には、「大阪主婦の会」の会員が「牛肉不買運動」によって、牛肉の公定価格を要求しました。この運動がきっかけとなって、東京では大阪主婦の会に協調して「不良商品追放運動」が繰り広げられました。1948年9月に奥むめお氏が、「不良マッチ退治主婦大会」を開催し、その結果、不良品の混入率の基準が引き下げられるようになり、この運動は、「主婦連合会(主婦連)」として結実し、一般の主婦の中に消費者意識を芽生えさせたのです。その後の主婦連合会等の消費者団体による活動は、消費者行政にとって大きな影響力をもつようになり、その活動は、「不良ジュース追放運動」、「ジュース裁判」などで知られています。
終戦後の物不足に対する生活防衛のために消費者運動に参加していた人々は、問題発生の原因が社会システムにあると考え、社会的に運動を展開する必要性を認識し始めていました。このため、1956年には、全国消費者団体連絡会が設立され、1957年の初の全国消費者大会では、消費者主権確立のための「消費者宣言」が採択されました。

この記事に関するお問い合わせ先

市民協働課(自治振興・生活安全担当)
奈良県橿原市八木町1-1-18(市役所本庁舎)
電話:0744-47-2638
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