かけはし

更新日:2026年01月19日

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かけはし70号

美術展から考えよう

   

かけはし~美術展から考えよう~第70号

奈良県教育委員会が発刊している『なかまとともに 小学校2』に『人の世に熱あれ 人間に光あれ』という教材があります。奈良県人権教育研究会が編集した『なかま 小学校高学年』にも『人の世に熱あれ 人間に光あれ』という教材があり、共に西光万吉さんが取り上げられています。そのようなこともあり、西光万吉(本名:清原一隆)さんのお名前を聞くと、『水平社』を連想する方は多いと考えます。また、『なかまとともに』には「仕方なく、万吉は奈良をはなれて東京に行き、画家を夢見て絵をかくことに打ち込みました。」と記載があり、『なかま』には「万吉は努力のかいがあって、二科展という大きな展覧会で入選しました。」との記載があり、西光さんは絵がとても上手であったことがわかります。西光さんの絵というと荊冠旗(けいかんき)を連想する方がおおいのではないでしょうか。荊冠はキリストが十字架の上で被せられた荊(いばら)の冠で、受難と殉教の象徴とされています。水平社宣言にも「殉教者がその荊冠を祝福されるときがきた」との一文があり、水平社宣言と荊冠旗が密接に関連していることが分かりますが、少し難しい言葉ですね。『部落問題学習の授業ネタ2』では「私たちのしてきた人に嫌われる仕事を誇れる、そして人に嫌われる仕事をしてきた私たち自身を誇れる時がきたのだ。」と現代語訳されています。荊冠旗は、黒い背景が差別の続く暗黒社会を象徴し、赤い荊冠が差別の続く歴史の中で苦難を乗り越え生き抜いてきた誇りを象徴し、全体として差別を跳ね返し誇りをもって生きていくという理想を表現していると部落解放同盟東京都連合会のホームページに掲載されています。

荊冠旗の説明が少し長くなってしまいましたが、今回は西光さんの『絵』をテーマに考えます。橿原市の善行寺には西光さんの絵があります。また、晩年を過ごした和歌山県にも生涯にわたって描き続けてこられた本格的な絵が残っています。そして、11月1日から1月22日まで水平社博物館で「西光万吉の表現」と題して生誕130年記念特別展が開催されています。企画した横浜国立大学の小田原のどかさんは「技術的に高いものを持っているし、伝統的な題材を独自に翻訳したり解釈したりする力もある。」と語っておられます。これまで芸術家として研究されてこなかった理由については、どの教育機関で学んだか、どの師についたか、何派かといったことを中心に扱うため、そこから外れると研究対象にならなかったからだそうです。そしてそれは、画業の師から娘との結婚を促されたり、パトロンの画商から奈良旅行の際に親を紹介するよう言われたりしたことから、出自が知られるのを恐れ画家の道を断念した経緯と重なります。

私たちの中に、西光さん=活動家との一面的な見方はないでしょうか。今回は画家の一面を紹介しましたがそれ以外にも、水平所を設立し活動した一面、和歌山のお連れ合いさんのご実家に借金までしたのに御所までの帰り道で困っている人に自分が必要なお金を使い切ってしまった一面、水平社や燕会などを通じて多くのなかまと支え合いながらも、自殺未遂に至ってしまった一面もありました。言葉で表現すると軽いのですが、人は一人ひとり様々な一面を持っていることを確認して3学期子どもたちと向き合ってみてはどうでしょう。1学期、2学期に見ることができなかった姿を見ることができれば素敵ですね。

                                                                               人権・地域教育課

 

 

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