かけはし
かけはし62号
子どもの自殺から考えよう
2024年の小中高生の自殺者は529人で過去最多となってしまいました。警察庁の自殺統計によると小中学生の自殺の原因・動機については家庭問題が57件と最も多く、健康問題45件、学友との不和(いじめ以外)23件が統計的には多くなっています。私たち周りの大人が原因に早く気づいて対応できればいいのですが、まず原因不詳が29件もあります。つぎに警察庁のホームページには「自殺の多くは多様かつ複合的な原因及び背景を有しており、様々な要因が連鎖する中で起きていることに留意が必要である。」との注意書きがあり、家族カウンセリング研究所の柿澤一二三さんなどがおっしゃる「自殺の原因は1つではなく、様々な要因が積み重なっている」との見解とも一致します。更に、子ども・若者の支援活動を行っているNPO法人OVAの伊藤次郎代表理事は「『死にたい』と子どもの顔には書いていないし、相談支援につながった子どもたちには、学校や家庭で適応しているように見える子どももいる」と述べておられます。では、具体的にどんな取組が考えられるのでしょうか。
文部科学省が作成した『教師が知っておきたい子どもの自殺予防』のマニュアル第2章「自殺のサインと対応」では自殺の心理として、自殺はある日突然、何の前触れもなく起こるということよりも、長い時間かかって徐々に危険な心理状態に陥っていくのが一般的で、自殺にまで追いつめられる子どもの心理について1.ひどい孤立感2.無価値感3.強い怒り4.苦しみが永遠に続くという思い込み5.心理的視野狭窄の5つの共通点を挙げています。
私たちにできることを考えると、一人ひとりのつながりを大切にすることで「誰も自分のことを助けてくれるはずがない」「居場所がない」「皆に迷惑をかけるだけだ」との1.のひどい孤立感や「私なんかいない方がいい」「生きていても仕方がない」との2.の無価値感などについてアプローチできると考えます。『つながり』という言葉はよく出てきますが、子どもたちはどんなときに『つながった』と感じるのでしょうか。元大阪市立大学非常勤講師の磯野雅治さんは「他者の考えに共鳴したとき」「自分にとって他者の存在が必要だと感じたとき」「他者が自分を必要としてくれていると感じられたとき」そして「学級における様々な活動で、共通の目標に向かう一体感が生まれたとき」の4つの場面を具体的に示されています。友だちとの間でこのような状況が生まれればいいのですが、自然発生的に生まれることはまれであり、担任のリアルな『しかけ』が必要であること。そして、『しかけ』の重要なポイントは「協力しあう」ことよりも「力を出し合う」という発想であることも合わせて述べておられます。そして「力を出し合う」という発想で『しかけ』についてはさまざまな準備をし、手だてを講じたとしても、学級づくりがうまくいくとは限りません。うまくいかなかったときに「次はがんばろう」で済ませず、なぜうまくいかなかったのかの振り返りが大切なのはもちろんですが、それにプラスして『笑顔』を挙げておられます。『笑顔』は子どもたちを安心させる。教師が『笑顔』であればこそ、子どもたちは教師に話しかけ、自分を聴いてもらおうとすると、磯野さんは述べておられます。「学級づくりは担任が1人で力んでみてもできるものではない。子どもとの協働作業が必要であり、それには『笑顔』が欠かせない」との磯野さんの言葉で今回は結ばせてもらいます。
人権・地域教育課
市内の教職員・保育士の方に向けて作成しております。
バックナンバー
かけはし61号~制服から考えよう~ (PDFファイル: 178.4KB)
かけはし60号~35年目のラブレターから考えよう~ (PDFファイル: 168.6KB)
かけはし59号~足りなかった1票から考えよう~ (PDFファイル: 191.2KB)
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更新日:2025年05月27日